鹿児島県ビジネスプランコンテスト 専門セミナーが開催されました

今年度で3回目を迎える、鹿児島県ビジネスプランコンテスト。先日行われた書類による1次審査で、一般部門8人、高校生部門8組のみなさんがファイナリストに選出されました。

最終審査は、年が明けて2021年1月23日土曜日に、鹿児島市の県民交流センター中ホールで開催される予定で、ファイナリストのみなさんはこの場で、各々のビジネスプランをプレゼンテーション形式で発表し、4人の審査員による審査を経て、大賞、優秀賞、高校生賞が決まります。

限られた時間の中で、いかに効果的にプランをアピールできるかが、プレゼンテーション成功のカギ。そこで、資料作りのスキルやコツ、発表時の心構えなど、プレゼンテーションにかかわるあれこれを、ファイナリストのみなさんに学んでいただこうと、専門セミナーを開催いたしました。

2020最終審査会チラシ

講師は昨年の審査員!

セミナーの講師にお迎えしたのは、昨年のビジネスプランコンテストで審査員を務めた、森友伸和さん。森友さんは、長崎県対馬市のご出身。20代で対馬市の特産品を企画・製造・販売する会社をおこし、ご当地プリンで大ヒットを放ちますが、ワンマンぶりがあだとなり経営破綻。

その経験を糧に、食品や地域産品の企画・提案・プロデュースを行い、平成28年から3年間は、福岡県のよろず支援拠点でコーディネーターを務めました。昨年4月からは鹿児島に拠点を移し、鹿児島県よろず支援拠点のチーフコーディネーターとして、創業支援や経営革新、売り上げ拡大など、経営に関する様々な相談に応じていらっしゃいます。

森友伸和さん
森友伸和さん

セミナーは2部形式で行われました。第1部では、「起業支援の最前線から~ビジネス成功のカギ~」と題して、森友さんご自身の成功と失敗のご経験と、現在のビジネス支援の現場でのご経験を踏まえて、ビジネスを始めるうえで大切なことをお話しいただきました。

そのビジネスは、社会に必要か?

森友さんが最初に問いかけたのは、「みなさんのビジネスは、社会に必要ですか?便利ですか?」という質問でした。自分が考えているビジネスは、市場をとらえているか、ニーズがあるかを見極め、時代のちょっと先を読み解くことが重要だというのです。

森友さんのもとには、コロナ禍を乗り切ろうと、業態を変えたい、ネットビジネスに参入したい、デリバリーをはじめたい、戦略的なインスタグラム発信をしたいなどなど、日々多くの相談が寄せられているそうですが、打開策を見出すのは簡単ではないといいます。

森友さんいわく「永遠に通用するビジネスモデルは存在しない。」これまでの仕組みが通用しなくなった今は、まさにビジネスモデルの転換点。これまでにないビジネスを生み出す知恵が求められています。

ビジネスの鉄則

新しいビジネスを始めるときに大切なのが、次の3つ。それは、「逆説の構造」、「八方よし」、「儲けのしくみ」です。

「逆説の構造」とは

これは、当たり前をひっくり返すアイデアで、今までにないビジネスを生み出すために必要なプロセスだといいます。

  • 起点
    ↓ ①定説をとらえる
  • 定説
    ↓ ②逆説を生み出す
  • 逆説
    ↓ ③仕組みを作る
  • 起点

例えば、起点に一流シェフがいたとします。①定説としては、お客さんは着席して高価な料理をいただきますが、②逆説は、お客さんは立って手頃な料理をいただく。そのための仕組み③が、立ち食い方式でお客さんの回転率を上げて、いい食材を使いつつも料理の値段は安く抑えて集客を図る、というものです。

この「逆説の構造」で成功したのが、「俺のフレンチ」というお店でした。そこでまず、定説を考えるときに必要なのが、「マインドマップ」を作ること。これは「〇〇といえば…?」をどんどん出していく作業です。

すぐに思いつくものは、誰もが思いつくことで、これは定説。それが出尽くしてからがアイデアの出番です。苦しみながらあと10のアイデアをひねり出す、そこに、逆説が生まれると森友さん。このとき、一人よりはグループで話し合うのが効果的だといいます。個人の意見→グループの意見→個人の意見→グループの意見…と交互に繰り返しながら議論を進める「ゼブラブレスト」がおすすめ。この際、発言者の意見を決して批判しないのがポイントです。

このように、定説と逆説を見極めて、プランがまとまったら、とりあえず実行してみる。計画→実行→評価→改善の、いわゆるPDCAサイクルでビジネスを実践するのが、うまくいく秘訣だそうです。

さらに、経営の四大資源といわれる、ヒト、モノ、カネ、情報を味方につけること。そのバランスをとりながらのかじ取りが欠かせません。

「八方よし」とは

近江(今の滋賀県)に本拠地を置いて全国各地を行商し、多くの豪商を輩出した近江商人。その商いの経験をもとにした「商売十訓」は、今でも、ビジネスを志す人なら必読といわれているそうです。

そのひとつに「三方よし」があります。売り手と買い手、そして世間の「三方」が満足する商いを心がけよという教えです。森友さんは、今の時代は「八方よし」でなければならないと話します。経営者、社員、取引先、株主、顧客、地域、社会、国、その「八方」すべてが満足するビジネスであること。

つまり、社会に必要とされているビジネスかどうか、その視点で自分たちのビジネスを見極めることが大事なのです。そのうえで、お金の流れやモノの流れを組み立てていくと、生き残るビジネスを生み出すことができるといいます。

儲けのしくみ

マーケット(市場)をみつけて、そのなかからターゲット(顧客)を決めて、ブランドを作って売っていく。儲かるビジネスとは、シンプルにこの3つを考えることだと森友さん。なかでも最も重要なのがマーケティングで、ビジネスの7割はマーケティングで決まるといっても過言ではないそうです。

そのビジネスは、オンリーワンなのかナンバーワンなのか、目指すマーケットはブルーオーシャン(競合相手のいない、あるいは少ない未開拓市場)なのかレッドオーシャン(競合相手の多い既存市場)なのか、売ろうとしているのは物なのか事(サービス)なのかを明確にします。

その際に役立つのが「マインドマップ」。(「逆説の構造」の章をご参照ください)みんなで意見を出し合いながら、自分たちがやろうとしているビジネスの強みや、外部からのイメージをあぶりだすことで、どんな市場で、どんなターゲットに、どんなブランドを作ればいいのかが見えてくるといいます。

「逆説の構造」、「八方よし」、「儲けのしくみ」この3つを掛け算することで、しっかりとしたビジネスモデルが出来上がるということです。

夢と志は違う

最後に森友さんは、ソフトバンクグループ㈱代表取締役会長の孫正義さんの言葉を引いて、「夢」と「志」の違いについて話しました。個人の欲望を満たすものが「夢」で、多くの人々の夢、願望、困っていることを助けてあげたいと、社会のために行動することが「志」だというのです。

プレゼンテーションでは、ぜひ、「志」で話してほしいと森友さん。社会をどう変えていくのか、コロナ下の経済をどう発展させていくのか、「志」をもって話せば、きっとプレゼンは成功するとエールを贈りました。

プレゼンテーションでは、ぜひ、「志」で話してほしい

第2部では、「魅力的なプレゼンネーションにするには~想いを伝えるために~」と題して、昨年のビジネスプランコンテストでの審査員のご経験をはじめ、数々のビジネスコンテストを見てこられたご経験を踏まえて、想いが伝わるプレゼンテーションの作り方を伝授していただきました。

昨年度の審査員として感じたこと

昨年度のコンテストで審査員を務められた森友さん。参加者のプレゼンテーションを見て良かった点と悪かった点を率直に語ってくださいました。

良かった点

  • 資料をしっかりと作りこんでいたこと。
  • 高校生の、練習を重ねたであろう努力と、はつらつとした姿勢。
  • うまくできなくて悔しがる、その気持ち。

悪かった点

  • 全く動かない。
  • 覚えこんでしまったことでセリフのようになり、感情が伝わってこない。
  • 話があちこちに飛んで散らかり、ストーリーにならずに、言いたいことがわからない。

そのうえで、プレゼンの内容のどこに注目したのかを教えてくださいました。

  1. 新規性はあるか?
    最も重視したのは、「新規性があるか」という点。昨年度は、採点結果が僅差だったプランを見比べて、面白くて将来的に伸びるぞというプランの方に、審査員全員の軍配が上がったというエピソードも。点数も大事だが、最後は新規性勝負。
  2. モノなのか、サービスなのか?
  3. 市場を見ているのか?
    やりたいことをやるだけではダメ。どんな課題を解決していくのか、これがあったら世の中が変わるという視点があるかどうかがカギ。
  4. 熱意はあるか?
    審査員は、プランの書類を熟読している。知りたいのは、書類以上のものがあるかどうか。プレゼンでは熱意を見たい。魂を込めて!
    では、プレゼンでは、何をどう伝えればいいのでしょうか。

プレゼンは最初の10秒で決まる!

審査員の印象は、最初の10秒でほぼ決まると森友さん。それだけに、テーマ=伝えたいことを、最初に明確にすることが大事。誰に、何を、どんな狙いでやろうとしているのかを、元気よく伝えます。ここで、プレゼンの極意を教えてくださいました。

  1. 自分を120%出す!
    どんなアクシデントがあっても熱意を伝えきるためには、120%を出しても足りないくらい。とにかく、持てるすべてを出し切ること。
  2. 読まない!
    資料や、パワーポイントの画面を読まないこと。聞いている人誰か一人に話しかけるつもりで。いつもよりあごをあげて、弧を描いて声を飛ばすイメージで話す。
  3. 緊張しない!
    一気に場をのみこんで、先に自分の環境をつくってしまえば緊張しない。相手のペースではなく、自分のペースでしゃべること。最初のうちに、自分にとって気が楽になるキーワードを発して、平常心になろう。(森友さんにとってのキーワードは、対馬とかプリン)
  4. 動きを入れる
    人は動くものに目線が行く。身振り手振りで見る人をひきつけよう。

プレゼン資料の作り方

プレゼン資料がかたい!と森友さん。魅力的なプレゼン資料作りに大切なポイントとは?

  1. 写真を使う
    自分の写真をどんどん使って!人気(ひとけ)のないところに人気(にんき)なし、人の気配は大事。目線を追うという人間の習性をいかして、伝えたい文字情報は、写真の目線の先に配置するのもおすすめ。
  2. 勝機はタイトルにあり
    タイトルは商品名だと思って、わかりやすく伝わりやすいものにしましょう。話の内容がわからないうちはタイトルが唯一の情報。ぜひ興味をひくタイトルを考えて。
  3. 書体や色を効果的に
    見やすくするために、書体は統一するのがベスト。見にくいので、明朝体は避けた方が無難だと森友さん。使う色は3色、ベースカラー70%、メインカラー25%、アクセントカラー5%という法則に基づいてデザインを考えるとよい。
  4. 位置をそろえて余白をとる
    目で追いやすいように、位置をそろえ、文章は少なめに。余白の美を意識して、見やすい配置を心がける。

プレゼンを楽しもう!

プレゼンを最大限に楽しんでほしいと森友さん。最後に、ご自身も必ずやっているという、緊張しないおまじないを教えてくださいました。左手の薬指をぎゅっぎゅっと握ると、血流が良くなって、緊張しないそうです。

最終審査は、来年1月23日土曜日13時から、鹿児島市の県民交流センター中ホールで開催されます。1次審査を通過された皆さんのビジネスプランは、どれもユニークで、鹿児島から新しい時代を創ってくれそうなものばかりです。

ぜひ会場にお越しになって、みなさんのプレゼンテーションをご観覧ください。

2021年1月23日(土)ファイナリストたちの公開プレゼンをご一緒に応援しませんか?
観覧希望の方は下記「観覧申し込み」よりお申し込みください。

ファイナルステージ観覧申し込み

2020最終審査会チラシ

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